アリエク経済学19(アリエクが安い理由について)
ITガジェなどの中国製品がアリエク・Temu・SHEINなどの越境ECを通じて、日本国内価格では考えられないほど安価に商品を販売している。この現象は単なる「中華製品は安い」というレベルでは説明できず、背後には中国経済の構造変化と、国家としての外貨(特にドル)獲得の強いインセンティブが存在する。
まず、中国経済は不動産バブル崩壊、内需の低迷、若年失業率の上昇など、長期的な減速局面に入っている。国内で元を回しても経済成長につながりにくく、むしろ海外からドルを獲得するほうが国家としての価値が高い。元安が進むほど、1ドルの国内購買力は上がるため、企業にとっても「ドルを稼ぐ」こと自体が利益率以上の意味を持つ。
越境ECはそのための最適な仕組みだ。従来の輸出は代理店や商社を経由し、利益が分散していたが、越境ECではメーカーが海外の消費者から直接ドルを受け取れる。物流も簡略化され、在庫リスクも小さく、利益率が低くても外貨が入るなら成立する。だからこそ、アリエクは赤字覚悟で世界展開を続けている。
さらに、中国政府は越境ECを「対外貿易の新たな成長点」と位置づけ、税制優遇・物流支援・越境EC総合試験区の拡大など、国家レベルで後押ししている。これは単なる民間ビジネスではなく、外貨獲得のための国家戦略として機能していることを意味する。
結果として、アリエクのストアは「利益率を削ってでも海外に売る」行動が合理化される。国内で元を稼ぐより、海外でドルを獲得するほうが価値が高いからだ。これが、アリエクが“異常に安い価格”が成立する背景であり、今後も続く可能性が高い。
越境ECの安売りは単なる価格競争ではなく、中国が外貨を求める構造的な必然によって支えられている。日本の消費者が享受している「激安中華」は、実は中国経済の深い事情と密接に結びついていると言える。
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